なぜ日本語脳のままでは中国語が通じないのか
中国語を学び始めた多くの駐在員が最初に感じるのが「単語は覚えたのに、会話になると通じない」という壁です。これは発音や声調だけでなく、語順の違いが大きな原因となっています。
日本語は助詞によって「誰が」「何を」「いつ」「どこで」を自由に入れ替え可能ですが、中国語は語順が意味を決定づけるため、日本語感覚で組み立てると意味が変わってしまうのです。
商談やプレゼンでは、この小さな違いが「誤解」「信頼低下」「取引の失敗」に直結します。だからこそ、駐在員は特に語順に敏感になる必要があります。
商談で誤解を招きやすい中国語語順5選
1. 時間・場所の位置を間違える
中国語では「時間」「場所」は主語の直後に置くのが基本です。
- 誤:我去上海明天。
→「私は上海に明日行きます」(不自然、意味が曖昧) - 正:我明天去上海。
→「私は明日上海に行きます」(自然で明確)
日本語脳のまま話すと「結局いつ行くのか」が伝わらず、商談のスケジュール調整で誤解を招く危険があります。
2. 形容詞・修飾語の位置
日本語では「大きな会社」「優秀な社員」と言いますが、中国語では修飾語が必ず前に来る決まりがあります。
- 誤:公司大。
- 正:大的公司。
語順を誤ると「その会社は大きい(単なる描写)」になり、文の意味やニュアンスが変わってしまいます。商談では「条件を説明する」のか「状況を述べる」のかを間違えると、交渉がかみ合わなくなります。
3. 結果補語の位置
ビジネスでは「完了・達成・失敗」など結果を表す補語が頻出します。日本語感覚で後ろに置くと意味不明になります。
- 誤:我做报告完成了。
→「私は報告を作る…完成した?」(不自然) - 正:我完成了报告。
→「私は報告を完成した」
成果報告や進捗説明では特に注意が必要です。補語の位置を間違えると「やったのか、まだなのか」が伝わらなくなります。
4. 否定詞「不」「没」の位置
日本語では「〜ではない」を後ろにつけますが、中国語では動詞の直前に必ず否定詞を置きます。
- 誤:我喜欢开会不。
→「私は会議が好き…ない?」(不自然) - 正:我不喜欢开会。
→「私は会議が好きではない」
否定の位置を誤ると「本当は肯定なのか否定なのか」が不明確になり、商談で相手に誤解を与えます。
5. 疑問文の語順
日本語は語尾を上げれば疑問文になりますが、中国語では疑問詞や文末助詞(吗)を使わなければなりません。
- 誤:你去上海?(語尾を上げるだけ → 不自然)
- 正:你去上海吗?(あなたは上海に行きますか?)
- 正:你什么时候去上海?(あなたはいつ上海に行きますか?)
商談で「確認」「提案」をする際に疑問文が不正確だと、相手が混乱して話が止まります。
駐在員が商談前にやるべき語順チェックリスト
- 時間・場所を主語の直後に置いているか?
- 修飾語(形容詞・副詞)の位置は正しいか?
- 結果補語(完成・结束など)を正しく配置できているか?
- 否定の「不」「没」を必ず動詞の前に置けているか?
- 疑問文で「吗」や疑問詞を忘れていないか?
実践練習法
- 自分の商談原稿にピンインを書き込み、語順を音読で確認
- 日本語で言いたいことを中国語に直した際に「語順のズレ」を意識する
- 録音して「伝わりやすさ」を客観的にチェック
なぜ語順を意識するだけで成果が変わるのか
語順の正確さを意識すると、以下のような効果があります。
- 相手の理解が早くなる → 商談がスムーズに進む
- 自分の発言に自信が持てる → 発言回数が増える
- 「中国語が聞きやすい」と評価され、信頼が増す
- 誤解によるやり直しが減り、時間とコストを節約できる
語順を直すことは「文法学習」以上に実務効率を改善する武器です。発音や語彙よりも先に語順を矯正することで、短期間でも相手に伝わる中国語を使えるようになります。
まとめ
日本語脳のままでは中国語は通じません。特にビジネスの現場では語順のズレが誤解を生み、信頼を損なうこともあります。
「時間・場所」「修飾語」「補語」「否定」「疑問文」の5つを意識するだけで、伝わりやすさが格段に向上します。
今日から自分の会話やプレゼン原稿を語順チェックリストで確認し、商談で誤解されない中国語を手に入れましょう。